吉島ひろ子様より管長猊下へ鍋島緞通の奉納
本家鍋島緞通・吉島ひろ子様より、管長猊下へ緞通が手渡される

2026年3月31日、佐賀県に工房を構える吉島伸一鍋島緞通株式会社の吉島ひろ子様が、遠路佐賀よりお越しになり、信貴山大本山千手院にて管長猊下に鍋島緞通をご奉納くださいました。

奉納されたのは、鍋島緞通の中でも最高級品とされる「献上蟹牡丹文縁七宝(けんじょう かにぼたんもん ふち しっぽう)」。徳川将軍家への献上に用いられたとされる格式高い図案で、縁には七宝文様があしらわれた、鍋島緞通を代表する逸品です。

350年の伝統──鍋島緞通とは

鍋島緞通は、江戸時代元禄年間にシルクロードを経て中国から佐賀に伝わった織物技術を起源とし、350年以上の歴史を誇る日本を代表する美術工芸品です。佐賀鍋島藩の庇護のもと、将軍家への献上品として珍重されてきました。

その最大の特徴は、機械を一切用いない完全手織りの製法にあります。耐久性とコシのある木綿の糸を職人が一本一本手で結び、数十年、ときには数百年にわたって変わらぬ風合いを保つ堅牢さを備えています。毛足の長さは18ミリ。足を踏み入れた瞬間に感じるふくよかな弾力は、手織りならではのものです。

本家鍋島緞通は、大正元年(1912年)に初代・吉島正敏が創業して以来、5代・100年以上にわたって家族で技法を継承してきました。「歴史と伝統を継承し、さらなる緞通美の世界を追求する」──その志は今も変わることなく、一枚一枚に受け継がれています。

献上蟹牡丹文縁七宝──その格式

献上蟹牡丹文縁七宝の全体像
吉島ひろ子様が緞通の図案について管長猊下にご説明される

今回奉納された「献上蟹牡丹文縁七宝」は、その名が示すとおり、蟹牡丹の大胆な文様を中心に据え、縁を七宝で飾った鍋島緞通屈指の格式を持つ図案です。藍を基調とした深い色彩に、牡丹の花が力強くも優美に織り出され、中央の円文様が堂々たる存在感を放ちます。

こちらの作品は、テレビ朝日「ざわつく!金曜日」や石原良純さんの番組収録にも使用され、鍋島緞通の最高級品として紹介されたものです。

鍋島緞通の織りの詳細
手織りによる精緻な織り目
本家鍋島緞通のラベル
「本家鍋島緞通」の証

毛足18ミリの豊かな厚みを持つ織地に触れると、350年の歴史を経てなお受け継がれる職人の手業の温もりが伝わってまいります。一結び一結びに込められた祈りにも似た丹精は、まさに仏前にふさわしい至宝といえるでしょう。

佐賀の手仕事と信貴山の祈り

信貴山千手院は、命蓮上人の開壇以来一千百年、毘沙門護摩の炎を一日も絶やすことなく灯し続けてまいりました。日々の勤行の中で受け継がれてきた祈りの伝統は、一本の糸から織り上げられる鍋島緞通の伝統と、どこか深く通じ合うものがあります。

吉島ひろ子様の真心こもるご奉納に、心より感謝申し上げます。この美しい緞通は、千手院の歴史の中で大切にお護りしてまいります。

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